vol.1 男の手料理
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若杉(若):先生とのお付き合いもかれこれ12〜13年になろうかと思います。 本当に早いものです。
  そんなこんなのお付き合いをさせて頂きながら先生の お宅にお伺いすると、いつもおいしい手料理でおもてなし頂
  いて、びっくりするのはその中でも必ず憲夫先生ご自身が腕を振るわれるものがあることです。私は、おいしいピザ
  を頂きました。

鈴木(鈴):その時々の流行りってありますから、若杉君が我が家にいらした時は ピザだったんですね。
  そういえば若杉君も我が家で「おでん」を作ってくれたり、たしかその時は現夫人のちよみさんと交際中でしたね。
 「いい人じゃない、逃がすんじゃないよ」 なんてよけいなことを言った記憶がありますが、覚えていますか?そして
  結婚 されてから二人で一緒にみえて、その時はメキシコ料理「タコス」も作っていただきましね。
  おいしかったですよ。

若:「おでん」に関しては、私の祖父が台東区の根岸で「和泉屋(いずみや)」 というおでん種の専門店をやっており
  ましてその味をどうしても先生に食べて 頂きたくって・・・。祖父は今91歳ですが、一人で現役でお店を切り盛り
  しています。残念ながら後継ぎがいないので祖父の代限りです。うちのカミサンもそ ういえば「鈴木亭」に一緒に
  お邪魔してますね。私は全く体質的に飲めないのです が、その分うちのがおいしいお酒を頂いていたと思います。
  はい、カミサンに ついては先生のご忠告に従い、しっかり逃がしませんでした。(笑)
  メキシコ料理は、私のライフワークになると思っています。メキシコ育ちなもので・・・。
  憲夫先生はここ最近はどんな料理に凝っていらっしゃいますか?

鈴:最近はそうですね、毎日のように鍋物をやるものですからウチのオリジナル鍋も ふえました。例えば「モツ鍋」。
  これはにんにくもどっさり入れて、豆板醤もたっ ぷり入れて、スタミナもりもりの鍋です。それと相変わらず
  「お好み焼き」かな。そ れもこれまでのように鉄板で作るのではなくてパエジャ鍋で作るの。加熱のすごいのなん
  のって。だからこれまでとはひと味もふた味も違うんです。

若:料理というと私自身は、小さい頃から母親が料理とかお菓子とか作るのを見ていて、自分でも興味が湧いて自然に手
  伝いをしていました。ただし、テーマ にあるように 「男の手料理」というのは、かくも「我がまま」なものでして、
  少なくとも私の中では「男の手料理=自分の好物=自分が今食べたいもの」に 限定されます。ですから、良く、自宅
  でパーティーなんかをやって私が自分でキッチンに立つのをみて「料理されるだんなさんて奥さんが羨ましい〜」 と
  カミサンに言う人も結構いますが、決まって、そういう人に私は「他は何も しませんよ」と言っています。
  「男の手料理」はそれで良いのだと思っています。

鈴:作る時は私は毎日作ります。家内と一緒に作る時が多いかもしれません。でも時間の余裕のない時は台所に立つこと
  は2.3週間 もない時もあります。料理は気晴らし、要するに気まぐれなんですね。

若:最近巷でもブームになっているのですが私は自分で打つ「手打ち蕎麦」に のめり込んでいます。よくお蕎麦屋さんの
  前に「手打ち」といったのぼりが出て いることがありますが、あれって結構「うそ」だったりします。ひどいのなん
  て「製麺所で機械打ちしている「手打ち」風蕎麦」だったりします。先生は麺類も お好きですよね?

鈴:そう、麺類はだいすきです。蕎麦の「手打ち」だなんて嘘言ってる店、結構ありますね。昔、うどんをよく家で手打ち
  していた頃があるんです。私は蕎麦も大好きで毎日食べてるくらいなんですが、蕎麦打ちにも挑戦しました。でも良い
  蕎麦粉がないんですね。なんといっても良い蕎麦粉でないとどんなことしたってうまい蕎麦できないんです。
  若杉君はその辺の材料とか、蕎麦粉とかはどうしていますか?

若:始めたきっかけは、自治会が主催の「蕎麦打ち体験」というのを家族で受けに 行ってそれ以来、東急ハンズで
  「はち」から「麺棒」といった道具を一通りそろえ ました。最近は休みの日になると必ず一食は蕎麦を打って食べて
  います。 蕎麦粉はインターネットで通販しています。蕎麦って、もちろん蕎麦本体、おつゆももちろんなんですが、
  実は茹でた後に出る「蕎麦湯」が美味いんですよね・・・。蕎麦湯が飲みたいが為に蕎麦打ちをしていると言っても
  言い過ぎではないかも知れ ません。

鈴:私の処にも大きな樫の木の「はち」(直径6.70cm)
があるんですよ。でも以前に右手が腱鞘炎になってから、あの粉
  を練る作業は
「危険」なんです。それで最近はご無沙汰になっているんです。
  いつか若杉君の手打ち蕎麦、食べたいな。楽しみにしていますヨ。

若:是非!
  さて、さっき料理は気晴らし、と言ってられましたが、以前、料理と音楽は似ている、といったことを聞いたことがあ
  るんですが。

鈴:よく「作曲について」聞かれることですが、どのように作るのか? とかね。そんな時、いつも料理の話しをするんで
  す。まず「何を食べたいか」という ことがありますね。中華とかイタリアンとか。そうして「中華のようなものが食
  べたい 」となると次ぎは具体的にどんなものを、と考えるわけです。そうしてイメージができたら (喰い意地が高
  まってきたら)食材の買い出し。いざ作る時にはどんな手順で作るか も考えるわけです。つまり自分で食べたいもの
  を自分で作る、どんなものを食べたいか、ということと、自分で聴きたい音楽を作る(作曲)、ということは似てい
  ると思って います。欲があるということはその分だけ我がままなことなんですね。

若:よくわかります。「我がまま」=「こだわり」でもあって、更に「独創性」 でもあるんですよね。その違いがそれぞ
  れの料理(作曲)の違いになるということですね。                 「男の手料理」終り。