レストランなどに入ると「煙草はお吸いになりますか?」とまず聞かれる。「ハイ吸います、スイマセン」などと一人でウけては面白がっている。喫煙常習者としては最近ことに肩身が狭い。パーテイなどでも会場の隅っこで小さくなって煙草を吸っていると、必ずや幾人かの喫煙者がおもむろに集まりすぐにお友達になってしまう。

 今や喫煙者は現代社会のアウトロー的存在になりつつある。           煙は目に見えるからそれが人さまに迷惑をかけていることはすぐ分かる。がTVを見ても社会・政治の現況を見ても何と私達の周りには毒気が多く吐き散らされていることか。
 人の吐く息を零下212度の冷却装置の中に吹き込むと、液化した息は滓(かす)となり色を帯びるという。極悪犯罪者の息の滓を調べたところその色は栗色、人をも殺せるほどの猛毒だったとの報告もある。ちなみに「悲しみ」は灰白色「恐怖」は青色らしい。
 和やかな心で吐く息はまさしく和気。悪気を含んだ息は毒気。「気を遣う」という言葉は自分から発する「気」というものについての自覚、の意も含んでいると私は思っている。

 毒気の多い社会。煙草の煙のように見えないだけに不気味でコワイ。煙草の煙も毒気も良いはずはないが、せめて煙草の煙の行き先を気にするように、自分から発する息も和気といきたいものだ。ーともにスイマセンの気持ちを以て為すべきかなー不遜許乞。
                 東京新聞ショッパー(埼玉地域)2000年新年号より
   
  
煙草と毒気