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あれはテレビで刑事ものが流行った時期ですからどのくらい前の出来事でしょう。少なくとも20年も昔のこと。
その当時はよく深夜散歩に出たところをみると、私が「夜型」だった時代のことになります。(ちなみに今は夜12時前にはナルベク寝るようにしています) 季節は夏、月夜の晩でした。街灯もまばらな家並みの間を歩いていた時のこと、前方100mほど先から私に向かって突進してくる「男」がいました。ジョギングのはずはない、何やら必死な雰囲気が伝わってきました。その後ろを追いかけてくる人影もみえました。 ー何やらタダゴトではないナー と思ったのもつかの間、(その間わずか数秒)その「男」はみるみるうちに近づいてきます。走ってくる男、そして歩いている私、二人は確実に数メートル先の小さな十字路で鉢合わせする筈でした。その時、私は見たのです。その「男」の顔を。「必死」というのを絵に描いた表情。顎が干上がるように上を向き、酸欠の魚がするようにパクパクさせた口、疲れたのか、そもそもその「男」は走るのが苦手なのか、足の動きより手の運動がその「男」の速くは走れない焦りを如実に表しているかのように、「糸マキマキ糸マキマキ」と子供がお遊戯でやるように手を胸のところで、激しく手を振っているのでした。後ろから追いかけているのは警官。 ーあっ!逃げてるんだー。 幸いに「未知との遭遇」にはならず「男」は私の前を右に折れて走っていきましたが、その後ろから追っている警官は、警棒(?)を手で押さえ込むように(まるで忍者走り)、目を点にして「犯人」の後をしっかりと追っていきました。そしてそのまた後ろから夜半には不釣り合いな赤いランプをグルグルさせたパトカーもついて来ました。 その「男」が10mほど先の角を曲がるまで目で追い、次に警官を見送り、パトカーが通り過ぎるまで、ポヤンと見てました。あっという間の出来事でした。 しばらく先へ歩いて行きますと人だかりがあります。家のすぐ近所ということもあって知っている人もおり、何事か?と聞きましたら、二階建てのこの家に空き巣らしい者が屋根をよじ登り、2階に侵入しようとしたらしい、と言うのです。 そこで初めてこの物語の筋書きが私の頭の中で出来上がりました。 この出来事は、当然のことながら我が家の大事件となり、また遊びに来る友人にわざわざその「男」の真似までして、その有り様を伝えたのでした。 かくして私は《その道(?!)》の評論家になりました。その後、刑事ドラマを見る度に評論家のごとく“のたまわる”のです。 「あの役者さんね、アレ素人だね」 「本当に逃げるってのはアンナもんじゃないヨ」 「まず顎、上げなくっちゃー」 「あの手の振りは何!? グランド一周するのとちゃうんだよ」 「“必死さ”、まるでなってないネ」・・・・・。 その後「必死の形相」を見せてくれた「犯人(?)」がどうなったのかは、あいにく知りません。 最近は夜中に出歩くことは滅多にありませんが、やはり、夜道は物騒ですから、皆さん、充分ご注意のほどを。 03.2.06 |
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