警察官に職務質問をされるの巻
 昨日、散歩をしながらふと10年前のあることを思い出し、つい思い出し笑いをしてしまいました。
 ちょうど今頃の季節、終電も既になく、人通りも殆どない真夜中の道を散歩をしていた時のことでした。たしか1時は過ぎていたでしょう。寒いので重ね着をし、顎のところまでコートを被い、おまけにマフラーで口から鼻と隠し、ポケットに両手を捻じ込み、さらに毛糸の帽子も深々と・・・・という、一見して怪しいヤツ。かりに私が同じ体(てい)の輩を見たら間違いなくそう思います。

 その頃、新潟冬の国体・入場行進曲の作曲をしていました。狭い部屋で息苦しくなって、やっぱり行進曲ですから歩きながら考えると調子が出ていいのです。「タッタカターン」とリズムに乗って歩いてました。するとバイクに乗った3人の警察官が私の前を通り過ぎ、気がつくとユーターンをして私の前途を遮るように目の前で止まっていました。それが凄いんです。まず3台のうちの一台は前方、もう一台は真横、そして残る一台は後方、と、さりげないかたちで私を取り巻いていました。私は「いよいよ来たか」と心が高鳴りました。一度でいいからこういう経験をしてみたかったのです。

「お散歩ですか?」
「ハイ」
「住所はどちらですか?」
「アッチです」と指を差す。
「あの〜アッチって?」
「××です。」
  ー私の興奮は会話を重ねる毎に高まってきた。
「××の何丁目ですか?」
  ースラスラと住所を言えばよいものを。
「×丁目です」
「番地は?」
「××です、?何かあったんですか?」
「イエ、こんな夜に物騒なものですから、一応決まりですから・・・」
 (ウソ言え。きっと怪しいヤツに思ったんだ)・・・
 ー自分の怪しい姿も省みずに・・・。
「年齢は?」
  ーこの辺から何やら不快になってきた。
「××です」
「ご職業は?」
「音楽家です」
 他の二人の警官はさりげなくしているようには見えるが、いざという時には
 即対応できるように警戒している、という空々しい目つき。
「音楽家というと?」
 ーだんだん私も邪魔をされた気分で面倒臭くなってきて
「作曲です」
「へえー、夜こうして散歩しながら作曲するんですか?」
 ー(妙なところで感心されたものだ)
 警察官もプロだから一見して怪しげでも私が悪いヤツには見えなかったのだろう。
「実は通報がありまして、この近辺で風呂場の覗きがあったというので・・・・・」
 ー(覗き?オレが覗き?)
「覗き」の犯人がこの辺をウロウロしているということ。
「皆さんも大変ですね、こんな遅くまで」
「それではお仕事頑張って下さい。」
「・・・・?」
「夜は物騒ですからお気をつけて」とこちらの背筋までシャキ、とするような敬礼をしてバイクのおまわりさんは去っていきました。その後、私は多分スキップして家に帰ったと思います。ホントに楽しい一夜でした。
 かくして出来た行進曲は新潟の雪空の下で、高らかに響いたのでありました。

 これを後日ある人に話しましたら、大変にウケてその人の関係する会報誌に掲載されたことがありました。

 また、もひとつあるんです。夜中の散歩で出会った面白いこと。
それはまたいづれかの機会に。                           1.29