【憧れ】
「憧れ」は「鈴木憲夫抒情小曲集」(女声合唱)の中に収められた曲です。
この作品は「1975年作曲」ですので、二十歳をちょっと過ぎた頃の作品となります。この作品を作る前年に「永訣の朝」を作曲しました。「永訣の朝」は宮城教育大学の演奏会のために友人が労を駆してくれ作曲を依頼、そして初演をしてくれました。
 初演も終わり、その労を取ってくれた友人のひとりSさんとある喫茶店で話していたときに、この「憧れ」の詩を見せてくれました。タイトルはありませんでした。その出典もはっきりしないうちに(権利のことなどそのときには知識はありませんでしたので・・・)、作曲をしたのでした。まずまず完成はしたものの、何かもの足りずに、発表はせずにしばらく机の中に潜ませておきながらしばらく時間が経ちました。
 女声合唱曲を意識をして作曲し始めたのは30代前半からです。私の女声合唱のほとんどははじめ「よのコーラス」(現さいたま市)によって演奏されました。その期にこの「憧れ」は机の中から再び机上に上がったのです。前記したように出典もはっきりしないままに(その頃には詩自体も散じていました)、詩も後半、私が付け足すように改めて完成させたのがこの「憧れ」です。タイトルも私がつけました。友人Sさんに出典を尋ねましたが、「たしかスウエーデン民謡ではなかったか?と」。半分以上は私の作詩ですが、私が「作詩者」と記するのもためらい、結局、詩が「作者不詳」と記してあるのはこのような理由からです。
 短い作品です。まるで日記でも読み返すように若い時、詩から感じたほのかな憧れのような思いが甦ります。そういう意味でもタイトルを「憧れ」にしました。

【朝に】
 この作品も上記「憧れ」と同じく「鈴木憲夫抒情小曲集」に収められた作品です。作曲年は1988年3月。やはり上記した「よのコーラス」の10周年コンサート記念で委嘱を受け作曲したものです。詩は団員の方からいくつか選んでものの中からこの立原道造の「朝に」に作曲することにしました。
 詩自体は短いものです。が、短いながらも様々なシーンがあります。その詩の世界に私自身も浸りながら、あたかも作詩者と同じ空気を吸うでもするかのように作曲したことを覚えています。「あ〜風が吹いている 涼しい風だ」など好きなところです。
「鈴木憲夫抒情小曲集」は現在ODP(受注生産)ながら、「憧れ」「朝に」などは比較的演奏頻度も高いものでしたので、混声合唱としてこの曲集に加えることにしました。

【ねんねんねっころやまのネムのはな】
 この作品も上記同様「鈴木憲夫抒情小曲集」に収められた作品です。作曲年は1983年2月。この詩が収められた詩集を盛岡の友人Tさんより送ってもらったのが作曲のきっかけでした。前記しましたように30代の頃から女声合唱を書くようになり、この詩集を読んだ時にすぐにこの「ねんねんねっころやま〜」に作曲しようと思い立ちました。この作品も短いものです。作曲はすぐに出来ました。はじめはア・カペラで作曲しました。作詩者の平野直さんは盛岡の方で民話の採集や童話作家としても活躍された方です。当時既にお亡くなりになっておりましたが、友人Tさんを通じて平野先生ご夫人に連絡を取り最近まで賀状のやりとりがありました。この作品は音楽之友社の教育音楽の付録になり、後に上記の私の曲集に収められました。そういえば平野先生ご夫人との賀状が途絶え、その後どうされたか気にしていました。ちなみに平野直先生の詩集は盛岡の友人Tさん(私の家内と大学が同じ)のご主人が制作されたものです。刊行元は盛岡の東山堂書店です。

【めぐりあいの中に】

 この作品は「茜の空に」(旧版)に収められたものです。「茜の空に」が新版になった際に、他の曲の組み合わせの関係から取り除くということになりました。しかし、要望も高いので、近いうちに女声版は復活することとなると思います。以下は「茜の空に」(旧版)にある「プログラムノート」より。
「この曲を作った1989年は「よのコーラス」と共に約半年も練習を重ねCD録音(キングレコード制作/合唱名曲選No.20「鈴木憲夫作品集」)に取組んだ年でした。10月にはCDが完成し、そのCDに収められた「抒情小曲集」「民話」の2冊の出版祝いのコンサートが「よのコーラス」の皆さんによって催されました。そのコンサートのために、私の心からのお礼としてこの「めぐりあいの中に」を作曲しました。
 めぐりあいとは妙なる響きを人にもたらすものだと思います。たんなる出会いをめぐりあいと感じるか、気づかずに通り過ぎるか、そのことだけでも人生の彩りも違ってくるように思います。
 この詩と曲は約10日ほどで出来ました。それだけ私の中で感謝と喜びが溢れていたということです。古くからの友人が私に言いました。「このような詩を書けるくらい、素晴らしいめぐりあいを持てるということは幸せなことだ」と。私もそう思います。
 この詩の最後に「だから人は美しきひとときのために/まためぐりあう」とあります。実際にそう思えるような人の社会だとしたらどんなにか素晴らしいことでしょう。この曲はそういう願いも込めた讃歌でもあるのです」        ’05年6月28日

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