一灯照隅(いっとうしょうぐう)今年の書き初め   04.1.11
 今年の書き初めは「一灯照隅(いっとうしょうぐう)」。
 この言葉はここ数年、色紙などにサインを求められると好んで書いているものです。意味は普通に読み下せば「一つの灯火(ともしび)隅を照す」となります。

 いつも年の初めに当たり、いろいろな言葉が浮かびそれを書き初め、また改めてその言葉を噛みしめる、といったことをしているのですが、今年はやはりこの言葉が頭から離れませんでした。それで敢えて今年の書き初めに。

 この言葉の意味をもっと噛み砕けばこういうことになります。
「暗いところでひとつのロウソクをともせば、その明かりは自分ひとりだけの居場所を照します。しかし、それが二人、三人、四人、さらに十人、百人の人がその手にロウソクを灯せば明るさも広がってきます。」
それが「万灯照隅」「遍灯照隅」へと続きます。

 私の仕事はモノを作る仕事、その作品が、また自作の指揮を通して、多くの人たちと出会うこと、そのものが仕事です。
「ちっちゃな家で、そのちっちゃな家の部屋の片隅でピアノや机に向かって、背を丸くしながら」ポツンポツンとやっているのが私の風景です。
 そこには願いや、祈りさえ込められています。そんな私から発するひとつのちいさな灯しび=作品=が、人の目に触れ、耳に触れ、心に触れ、それが徐々に広がっていっていることを常に感じもし、願ってもいます。
 これは作曲という仕事に限らず、全てのことにいい当てられると私は思っています。

 下手くそな「書」で<恥ずかし気もなく>、ともう一人の自分がささやきます。いずれ何度も何度も書いていくうちに少しは味も出てくるでしょう。「書」とはそんなものではないかと、少々開き直りつつ思っているところです。                        04.1.11

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