バックナンバー
1.私と「永訣の朝」
2.学生生活と合唱
3.めぐりあいの中に
4.私と合唱とサッカーと
ゲスト・エッセイ(2)
学生生活と合唱
藤巻 武
元関西大学混声合唱団ひびき学生指揮者。
プロフィールは最後に。
 私は関西の大学で学生指揮者をしていました。
その時に鈴木憲夫先生の曲(永訣の朝)を指揮させて頂いたご縁で今回このコーナーに投稿させて頂きました。
 現在私が大学の音楽活動について見える物を皆さんに分かって頂ければ幸いと思い、拙文ではありますがこちらに掲載して頂くことになりました。私なりの見解での大学生活と合唱。皆さんとの見解に相違があるかもしれませんが、これも一つの見方として気軽に読んで頂けると幸いです。

 大学合唱界は以前からその衰退を叫ばれてきています。
大学生は多くの方々から叱咤激励を受けて日々活動しているのですが、悲しいかな、現在の大学生にはその期待に応える術を持っていません。
 持っているのは、先人が作り残して行った「マニュアル」という一本のレールのみ。高校を出て右も左もわからないままポンとマニュアルを渡される。分からないから不安だけど、とりあえずそれに従っていれば大きな問題は起こらない。
これが大学生が「最も保守的である」と言われる一つの原因だと私は考えていました。

 ちなみに今、大阪には「アンサンブル・エヴォリュエ」という合唱団があります。大学の団だけでは物足らない者、大学の団の規模が小さいから多くの人間と歌いたい者、それぞれがそれぞれの理由を胸に集まった寄せ集めの大学合唱団です。
 縁あって私もエヴォリュエに参加することになったのですが、なにせエヴォリュエはまだ発足して2年足らずの生まれたての合唱団です。
さきほど申し上げたマニュアルなどありません。
 そんなエヴォリュエが先日ジョイントコンサートを開きました。
ジョイントのお相手はこれも「神戸大学混声合唱団 々(ノマ)」という神戸大学の人間を中心とした寄せ集め合唱団。寄せ集めの二団がジョイントを開くということはこれまでにはなかった動きでした。

 マニュアルがない上での演奏会の運営は確かに難しいものでした。
各団から集まった運営経験のある者がお互いの知識を集めて喧喧諤諤。
ミーティングも何回も繰り返し、何とか演奏会にこぎつけた、という感じです。
 それでも、演奏会は成功しました。ほぼ満席に近いお客様と、音楽を通して至福の時間を楽しみ、お客様も我々も皆満足した顔で演奏会を閉めることが出来ました。
 それは運営のリーダーがしっかりとしたリーダーシップを取れたこと、細かい演出の一つ一つを団員が理解して皆がテキパキと動いたこと、成功の原因は様々考えられるのですが、何よりも大きな原因は「団員のやる気、『成功させたい』という想い」が一番大きかったのではないでしょうか。
 その時、私は気付いたのです。
大学生が衰退しているのは決してマニュアルのせいではない。
マニュアルに甘えてより良い物を作ろうとしなかった大学生自身の心の内に問題があったのだ。やる気一つあれば、大学生でも何でも出来るのではないか、と。

 大学生が社会人として扱われる以上、責任は常に自分達に振りかかって来ます。
しかし、大学生は「未熟な社会人」であると思うのです。
責任や失敗を恐れてマニュアルや団の考え方に傾倒してしまうと、当たり前の成功しか味わうことしかできません。
 先人の方々がマニュアルを作るには多くの成功と、そしてより多くの失敗を重ねてきたことでしょう。大学生はそのマニュアルを上手く「活用」しながら更なる挑戦をしないと決して前進できないのです。
 そんな当たり前のことに、今の大学生は気付いていないのではないでしょうか。
多くの合唱団はその引継ぎの中で、団としての思想や運営方法を教わります。
衰退が叫ばれる今こそ、それら先人の作った物から脱却して「自分達が何をしたいのか」という夢をしっかりと持ち、実行に移していかなけねばなりません。
作られた成功も、努力の末の失敗も、それらは全て自分達の大事な思い出になるのですから。
大事なのは夢と想い。
それさえあれば、大学生だろうとなんだろうと、なんだって出来るのです。

 現在私が連盟の役員として大学生を見つめている関係上、ちょっと説教臭くなってしまいましたが、多くの皆さんがこの拙文で奮起して頂けたら幸いです。
今ある形に囚われず、自分達の想いに、夢に正直になってやりたいことをしてほしいと思います。

 最後になりましたが、鈴木先生のこれからのさらなる活躍を期待して、締めとさせて頂きます。
最後までお読み頂いた方々、ありがとうございました。
                                03年3月18日

自己紹介:藤巻 武
血液型:B型 星座:牡牛座
高校の時は実はバスケット部(しかし大成せず)でした。
高校の時に手伝い程度で始めた合唱を大学で本格的に始めました。
2回生の時に関西大学混声合唱団ひびきの学生指揮者としてデビューしました。
現在は淀川混声合唱団、アンサンブル・エヴォリュエに所属し、
伊東恵司と飯沼京子という関西でも人気の指揮者2人の背中を
追っかけ続ける日々です。
また、大阪府合唱連盟の主事補という肩書も頂き、
「大学生の視野を持つ役員」という立場で大学生の応援や、
連盟の参加をしています。
現在、関西大学5回生です。(泣)

                
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